明光中学校では、スクールAIを「答えを教える存在」ではなく、
「考えを深める相談相手」として活用した英語授業が行われています。
本レポートでは、公開授業の様子と、生徒・教員・教育委員会の声から見えてきた学びの姿をお伝えします。
12月12日、茨城町立明光中学校の公開授業で2年2組で行われた英語科の「My School and School Life(New Horizon English Course 2)」(授業者:大和田先生、石間先生、Marcel先生、Pearl先生)を参観しました。本授業では、「明光中学校の良さを、大子町立大子中学校の2年生生徒の知りたいことに合わせて英語で紹介する」というテーマで、生徒たちが学校紹介文づくりに取り組んでいました。
ただ英語を書くのではなく、「誰に伝えるのか」「相手が何を知りたいのか」を考えながら文章を組み立てていく姿が見られました。
公開授業の概要
- 学校名:茨城町立明光中学校
- 授業者:授業者:大和田先生・石間先生・Marcel先生(ALT)・Pearl先生(ALT)
- 教科・単元:英語「My School and School Life(New Horizon English Course 2)」
- 対象:2年2組
授業の流れ
① 導入
- 教師やALTとの英語によるやり取り(Interactive Teacher Talk)
- 生徒同士のやり取り①
- 内容面の指導
- スクールAIを使ったスピーキング練習
- 言語面の指導
- 生徒同士のやり取り②
活動→指導・練習→活動、という流れが自然に組み込まれていました。
② 課題の確認
- 「相手の知りたいことを意識して、明光中学校を英語で紹介する」
③ 学校紹介文の作成(Padlet活用)
- 前時の発表内容をペアで紹介
- 話した内容を基に、自分で英文を書く
- スクールAIを使って推敲
- 英文を完成させ、Padletに投稿

AIは答えを出す存在ではなく、自分の表現を見直すための相談相手として使われていました。
④ 友達の文章を読み、コメントを書く
- コメントのポイントを確認
- 3文以上書く
- 具体的に書く
- 友達の投稿文に良い点を伝えるコメントを書く
教室内では、互いの表現を認め合う温かなやりとりが見られました。
⑤ リフレクション
- スクールAIを使い、本時の目標に照らした振り返り
- 自分の表現や学びを言語化する時間

この授業を支えているのは、日常の学びの積み重ねだと感じました。
生徒さんに話を聞きました
実際に授業を受けた生徒さんたちは、スクールAIを活用した英語の学びをどのように感じていたのでしょうか。
授業後、生徒さんに話を聞きました。
- 1. スクールAIを使ってみて、授業や英語の学習でどんなところが楽しいですか?
-
いつでもAIと話せるところが楽しいです。自分のミスや単語の間違いを直してくれるので、次につなげられていると感じます。
- 2. AIと一緒に学ぶことで、前よりもできるようになったことはありますか?
-
文法のミスが減りました。話すことも書くことも、前より思い通りにできるようになったと思います。
- 3. 授業でスクールAIを使う前と後で、英語を勉強する気持ちに変化はありましたか?
-
家でも英語をやるようになりました。英語の勉強が、前よりも楽しいと感じています。
- 4. スクールAIを使っていて「ここはちょっと難しいな」と思うところはありますか?
-
自分が話した英語をAIが違う内容で聞き取ってしまうことがあり、そのまま進むとうまくいかないことがあります。正しい内容に直す必要があると感じました。
- 5. 将来、英語がもっと上手になったらどんなことをしてみたいですか?
また、スクールAIはその手助けになりそうですか? -
旅行に行きたいです。
バスケットボールのアメリカのNBAの試合を見に行きたいです。
スクールAIは、手助けになると思います。
インタビューに答えてくれた生徒さんの中には、もともと英語が好きだった生徒さんだけでなく、「中学校に入ってから英語が好きになった」と話す生徒さんもいました。
生徒たちの回答からは、スクールAIを正解を教えてもらう存在というよりも、自分の表現を試し、直しながら進んでいくための相手として使っている様子がうかがえます。
「文法のミスが減った」「家でも英語をやるようになった」といった声に見られるように、学習の場面が授業の中だけでなく、日常へと広がっていることも印象的でした。
うまくいかないと感じる場面も含めて学び続けようとする姿から、英語との向き合い方が少しずつ変わってきている様子が感じられます。

こうした生徒の姿を、先生はどのように見ているのでしょうか。
先生方にインタビューしました
今回お話を伺ったのは、3名の先生方です。
- 1、2年生担当:石間先生
- 2年生担当:大和田先生
- 3年生担当:石井先生
- 1. 「Q1. 英語科における「書く力(Writing)」について、これまでどのような課題感がありましたか?
-
これまでは、話すことはできても、書く段階で手が止まってしまう生徒が多いことが課題でした。
特に、「日本語では言いたいことがはっきりしているのに、英語にしようとすると難しく考えすぎてしまい、書き出せない」ケースが目立っていました。
その結果、語数が少なくなったり、同じ表現ばかりを使ってしまったりと、表現の広がりに課題を感じていました。
- 2. 今回の授業では、Writingのどの場面でスクールAIを活用していましたか?
-
まずは、自分の力で書いてみることを大前提にしています。
その上で、- 書いた英文が相手に伝わるか確認したいとき
- 同じ表現が続いてしまい、言い換えを考えたいとき
- 文法的に不安があるとき
といった場面で、「相談相手」としてスクールAIを使うようにしています。
完成形をそのままもらうのではなく、「ここはどう言えばいい?」「もっと自然にできる?」と聞く使い方を意識させています。
- 3. スクールAIを使う際に、生徒に特に伝えていることはありますか?
-
一番大切にしているのは、
「AIの答えが正解とは限らない」ということです。AIが示した表現をそのまま使うのではなく、
- 自分の言いたい内容と合っているか
- 本当に相手に伝えたい表現になっているか
を必ず確認するよう声をかけています。
また、「間違えても大丈夫」「何度聞き直してもいい」という安心感を持たせることで、
書くことへの心理的ハードルを下げることも意識しています。 - 4. スクールAIを取り入れてから、生徒のWritingにはどのような変化が見られましたか?
-
一番大きい変化は、「とにかく書いてみよう」という姿勢が定着してきたことです。
以前は途中で止まってしまっていた生徒も、まずは書き切り、AIを使って直しながら良くしていく、という流れが自然にできるようになってきました。
語数が増えただけでなく、相手を意識した表現や、自分なりの工夫が見られる文章が増えてきたと感じています。
- 5. 授業づくりの中で、スクールAIはどのような位置づけですか?
-
スクールAIは、答えを教える存在ではなく、学びを支えるアドバイザーだと考えています。
- 最初は自分で考える
- 途中でAIに相談する
- 最後はまた自分の力で整える
この往復があることで、生徒の思考が深まっていると感じています。
- 6. 今後、英語授業やWriting指導の中で、どのように活用していきたいですか?
-
今後も、「安心して挑戦できる環境づくり」の一つとして活用していきたいです。
書くことが苦手な生徒にとっても、「まずはやってみよう」と思えるきっかけになるツールだと感じています。
最終的には、AIに頼らなくても自分の力で表現できるようになることを目標に、段階的に使い方を工夫していきたいと考えています。
指導主事の先生方より
茨城町教育委員会 阿部指導主事
Q. 明光中学校のAI活用を、教育委員会としてどのように見ていますか。
A.明光中学校をAI活用のチャレンジ校として推薦した理由の一つとして、先生方がAI活用に前向きで、授業改善に意欲的に取り組んでいた点が挙げられます。
実際に授業を見ていて、生徒が「自分の学びを自分で進めていく」という主体性を持ち始めていることを強く感じています。
AIを使うことで個別に学習を進められるようになり、その分、先生やALTの指導観の転換が図られ、生徒への関わり方を見直すきっかけにもなっています。 また、先生方自身もプロンプトを工夫しながら、よりよい使い方を模索している点がとても印象的です。
Q. 今後、この取組をどのように広げていきたいと考えていますか。
A.この取組を一年で終わらせるのではなく、先生方が「続けたい」と思える形で継続できるよう、環境を整えていきたいと考えています。
英語については、町内のもう一つの中学校とも実践を共有し、両校で英語力の向上を図っていきたいです。 今後は、教科の枠を超えた実践の共有も進めながら、明光中学校での取組を町全体の学びにつなげていければと考えています。
茨城県教育委員会 虻川指導主事
今回の授業について、茨城県教育委員会 指導主事の虻川指導主事からもコメントをいただきました。
英語の授業づくりにおけるポイントである「コミュニケーションを行う目的や場面、状況が明確な設定」や「生徒が実際に英語を使用してコミュニケーションを行うこと」がしっかりと押さえられていることが、まず印象的でした。
その上でAIが活用されており、AIを目的化せず、あくまで学びを支える手段として位置づけられている点がとても良いと感じました。
また、先生方やALTからのフィードバック、学習状況のモニタリングが丁寧に行われており、これまでの継続的な指導の積み重ねが、現在の生徒の姿につながっていると感じます。
AIの活用によって、得意な生徒だけでなく、英語に苦手意識を持つ生徒も含め、一人ひとりが学びに向かう姿が見られました。
50分間集中して授業に取り組む生徒の姿は、大変印象的でした。
AIはあくまで手段であり、英語授業の基本を大切にしてきた明光中学校の取組があってこそ、今回のような効果的な活用が実現していると感じています。
授業を振り返って
授業の冒頭から印象的だったのは、生徒さんたちの英語のスピーキング力でした。
公開授業後の研究協議会で他校の先生に「中学2年生で、ここまで話すことができるのか」と質問したところ、「これは本当にすごい」と驚かれていたのが印象に残っています。
実際に、自己紹介文をPadletに書き込む場面では、90語ほど入力していた生徒さんもいたとのこと。語数の多さだけでなく、自分の考えを相手に伝えようとする姿勢から、明光中学校の生徒さんたちが日頃から英語に向き合ってきた積み重ねを感じました。
また、生徒さんたちはAIに答えを任せるのではなく、自分の考えを深めるための「相談相手」として自然に活用していました。AIとのやり取りを通して考えを整理し、最終的には自分の言葉で表現しようとする姿から、一人ひとりが主体的に学びに向き合っていることが伝わってきました。
授業の終わりには、その日の学びを振り返る時間が設けられていました。先生が「日本語でもよい」と声をかける中で、英語で振り返りを書いている生徒さんがいたことも印象的でした。相手を意識して伝えることの大切さや、友達の表現から学んだことを、自分の言葉で確かめようとする姿に、確かな成長を感じました。
教室全体に流れていたのは、「考えること」「伝え合うこと」を楽しむ、温かく前向きな空気でした。
これから生徒さんたちの学びがどのように広がっていくのか、楽しみになる授業でした。
■ 本取組に関する詳細や、スクールAIを活用した授業づくりに関するご相談は、下記までお気軽にお問い合わせください。
株式会社みんがく
E-mail:info@mingaku.net
TEL:03-4335-3965
本レポートで紹介した明光中学校の実践以外にも、スクールAIを活用した授業事例や、先生方の工夫を紹介しています。ぜひ、他の取組もあわせてご覧ください。
