東京学芸大学付属特別支援学校 岩井祐一先生

東京学芸大学付属特別支援学校で高等部の教員を務めております岩井祐一と申します。同時に、東京学芸大学の教育インキュベーションセンターの教員も兼任しており、体育の授業や理科、ICT活用に特に関心を持って教育活動に取り組んでいます。日々、特別支援教育の現場で、生徒一人一人の可能性を引き出す教育実践を目指しています。

A:私は現在、体育の授業における学習支援ツールとしてスクールAIを活用しています。多くの学校では体育ノートを使用して授業の振り返りや自己評価を行っていますが、実際の教育現場では、それらが効果的にフィードバックされていない、あるいは十分な振り返りができていないという課題が存在します。この課題に対応するため、スクールAIを活用した新しい形の体育ノートの実践を行っています。従来の紙のノートでは難しかったリアルタイムでのフィードバックや、生徒個々の特性に応じた対話的な振り返りを可能にすることを目指しています。

A:実践では、軽度から中度の知的障害を持つ4名の生徒を対象に、バスケットボールの授業での試行を行いました。本校では生徒一人一人がiPadを所持しているため、これを活用して実施しています。主に授業の振り返りの場面で活用しており、具体的には授業終了後にスクールAIとの対話を通じて学習内容を振り返ります。例えば、ある生徒は「赤チームに負けないように手を挙げて守るようにしました」と回答し、それに対してAIが更なる問いかけを行うことで、より深い振り返りを促すことができています。このような対話的なやり取りを通じて、生徒たちは自身の学びをより深く理解し、言語化する機会を得ています。

A:生徒たちからは非常に前向きな反応が得られています。特に印象的だったのは、即時的なフィードバックが得られる点を評価する声が多かったことです。従来の体育ノートでは、教員からのコメントを待つ必要がありましたが、スクールAIを使用することで、リアルタイムでの対話的な振り返りが可能になりました。また、AIからの励ましの言葉や褒め言葉が、生徒たちのモチベーション向上にも繋がっています。タブレットの操作性の良さも好評です。一方で、じっくりと考えながら入力する必要があるため、紙のノートと比べて時間がかかるという意見もありました。これは今後の改善点として検討していく必要があると考えています。

本校は元々ICTやAI導入に対して比較的オープンな環境でしたが、スクールAIの特徴的な点は、教育現場に特化した設計がなされているということです。一般的なAIと比較して、教育的な文脈を十分に理解した上での対応が可能です。また、スクールAIを中心としたコミュニティでは、教員向けのワークショップなども定期的に開催されており、初めて導入する教員や生徒にとっても取り組みやすい環境が整っています。重要なのは、AIに依存するのではなく、深い学びを支援するツールとして適切に位置付けることです。教育の本質を見失わずに、テクノロジーを効果的に活用していく姿勢が大切だと考えています。

A:現在は体育の授業での活用が中心ですが、今後は他教科への展開も視野に入れています。振り返りの習慣化は、目標設定能力の向上や自己理解の深化につながる重要なスキルです。特に、これからの時代を生きていく生徒たちにとって、自己の学びを適切に振り返り、次の目標を設定する力は必要不可欠です。各教科の特性や学習目標を踏まえながら、スクールAIの活用可能性を更に探っていきたいと考えています。

A:スクールAIの最大の特徴は、教育現場での実用性を第一に考えて設計されている点です。汎用的なAIとは異なり、教育に特化したツールとして、学校現場での活用がしやすいよう配慮されています。柔軟なカスタマイズが可能で、授業支援はもちろん、生徒支援や校務支援など、様々な場面での活用が期待できます。今回ご紹介した振り返り活動以外にも、多様な教育活動において効果的な支援ツールとなり得ます。ぜひスクールAIを活用しながら、皆様の教育実践のアップデートにチャレンジしていただければと思います。

  • 東京学芸大学付属特別支援学校の岩井祐一教諭は、特別支援教育におけるスクールAIの活用事例として、体育の授業での振り返り支援を実践しています。
  • 従来の体育ノートの課題を克服するため、AIとの対話を通じた振り返りを導入し、生徒からは即時フィードバックや対話的な学びの面で高評価を得ています。
  • 教育現場に特化した設計と実用性の高さを活かし、今後は他教科への展開も視野に入れながら、より効果的な教育支援ツールとしての可能性を追求しています。