AIとともに授業を進化させる
吉金佳能先生
モード名:科学レポート評価
教科:理科
▼ポイント
「成果物の評価」と「振り返り」に活用。
尾形英亮先生
モード名:5年算数「データ活用」
~集めたグラフデータの分析・結論・新たな探究課題の発見~
対象:小学5年生児童
教科:算数
▼ポイント
グラフデータを読み込ませることで、データ分析、そこから導き出される結論、新たな探究課題を見つけるまでのサポートをしてくれる
中村優希先生
モード名:4年国語「文章の推敲」
対象:小学4年生児童
教科:国語
▼ポイント
児童が作成した文章を読み込ませることで、推敲するための視点をフィードバックしてくれる。一人一人に即時フィードバックされるので、それを基に何度も文章を改善することが可能になる。
Q:まずは自己紹介をお願いします。
宝仙小学校の吉金佳能です。今年で教員18年目となり、理科の専科を担当しています。理科では探究型の学びを取り入れ、子どもたちが主体的に研究に取り組む力を育てています。
尾形英亮と申します。教員18年目ですが、宝仙学園小学校は1年目で、現在五年生の担任として算数を担当しています。これまでの公立小学校や海外の日本人学校での勤務経験を活かし、AIを使いながら子どもたちの可能性を広げる授業づくりを実践しています。
中村優希と申します。宝仙学園小学校で7年目、四年生の担任として国語を担当しています。生成AIを国語の授業に取り入れ、文章の書き直しや改善の視点を子どもたちが自ら見つけられるよう工夫しながら指導を行っています。
Q:作られているモードの名前と概要、その背景と目的を教えていただけますか?
中村先生:
国語の授業で「文章の推敲」に生成AIを活用しました。子どもたちが自分の書いた文章を振り返り、改善点に気づけるように、AIには「答えを示さず、直す視点を提供すること」を特に重視しました。例えば「一文が長い」「漢字が難しい」など、子どもたちが理解できる形でフィードバックするようにプロンプトを工夫しました。また、事前に子どもたちと一緒に「返答選択肢」を考え、フィードバックの質を高める工夫もしました。
吉金先生:
理科では「成果物の評価」と「振り返り」にスクールAIを活用しています。レポートを画像として読み込ませ、AIにフィードバックをもらうことで、子どもたちが自分の成果物を客観的に振り返る力を養っています。
また、毎時間の学びの振り返りをAIに突っ込んでもらい、「理解が不十分な部分」を明確にすることで、学びの質が高まる実感があります。
尾形先生:
算数では探究活動でグラフデータを分析し、結論をまとめ、新たな探究課題を見つける活動でスクールAIを使いました。具体的にはグラフデータを読み込ませ、AIに分析・結論のヒントや視点を与えてもらいました。これにより、子どもたちはデータを根拠に自分たちの考えをまとめ、新たな探究課題を見つける力を養うことができました。
Q:具体的な活用方法を教えていただけますか?
尾形先生:探究活動の一例として、あるグループは「動画視聴の時間やサービスの選び方を比べて、自分に合った視聴スタイルを見つける」という自分たちで決めたテーマに取り組みました。クラスのアンケートデータと全国平均データを比較し、AIに分析のヒントをもらいながら、結論をまとめる活動です。AIはグラフデータの分析を文章化し、子どもたちが理解しやすい形で助言してくれました。また、子どもたちの分析や結論について、具体的なフィードバックを与えてくれました。子どもたちはそれらを参考にしつつ、自分の言葉で分析や結論をまとめ、新たな探究課題を見出し、振り返りまで行いました。短時間で質の高い探究活動を実現できたのは、AIのサポートのおかげだと感じています。
Q:実際の導入効果や教員・生徒の反応はいかがでしょうか?
中村先生:子どもたちはAIから点数や客観的なフィードバックが返ってくることに前向きでした。特に自分の書いた文章を改善するための視点を得ることができ、授業中も「もっと良くしよう」という意欲が見られました。また、友達の文章と比較し、「ここが良いね」「もう少し工夫できるね」といった交流も自然と生まれました。AIが客観的な立場で評価してくれることで、子どもたち自身の学びに対する自信も高まったと感じています。
尾形先生:上位の子は自分の力で解きたいという意欲が強く、AIを使わずに挑戦する姿勢が見られました。一方で下位の子はAIの力を借りて壁を乗り越えようとする様子があり、学習の助けになっていました。興味がある課題や探究心をくすぐる内容であれば、子どもたちはAIを適切に活用し、自分の力で解決しようとする姿勢を見せています。
Q:導入に際する注意点や浸透するための工夫について教えてください。
吉金先生:研修を通じて、まずは教員自身が生成AIを触る機会を設けました。スクールAIには豊富なテンプレートがあるため、初心者でもすぐに授業に取り入れることができます。また、評価や振り返りなど、従来の授業スタイルを大きく変えずにプラスアルファで使えることもポイントです。
尾形先生:リテラシーの部分は大事だと感じます。AIをただ使うのではなく、どう使えば学びが深まるのかを考えることが求められます。また、組織として使い方を共有し、先生同士で相談し合いながら活用することで、自然と浸透していくのではないかと考えています。
Q:今後の展望についてお聞かせください。
吉金先生:未来社会に挑む学校として、AIの可能性を最大限に追求していきたいです。ポジティブな効果だけでなく、ネガティブな側面も含めて向き合い、子どもたちが自分の未来を切り拓く力を育てたいと考えています。AIを使わない選択肢も含め、子どもたち自身が学びを選び取れるような環境づくりを目指します。
Q:スクールAIに興味を持っている先生方へメッセージをお願いします。
中村先生:まずは触ってみることが大切です。AIの返す答えやフィードバックを通じて、授業の新しい可能性を見つけられるはずです。プロンプトを工夫し、自分に合った活用法を探してみてください。
尾形先生:子どもたちの未来に向けて、AIは教師にとって強力なパートナーです。特に個別最適な学びや多様な支援が求められる今、AIとともに授業を進化させることが大切だと感じています。
吉金先生:生成AIは授業を「進化」させ、子どもの学びを「深化」させるツールです。授業の深さと質を高めるためにも、ぜひ積極的に取り入れ、子どもたちの学びを広げてください。