東京学芸大学による実証研究 小中学生英語の発話量の増加につながる可能性が示唆

基本情報
項目内容
事業文部科学省「AIの活用による英語教育強化事業」
参加校東京学芸大学附属小金井小学校 ほか
対象小学校5・6年生、中学1年生
参加人数約1,100名
活用場面英語授業・帯活動
  • 英語の発話回数が約40%増加
  • AIとの会話ログ分析により学習変化を可視化
  • 語彙レベルに関わらず英語で話す機会が増加
  • AIと教師の役割を見直す機会に

文部科学省「AIの活用による英語教育強化事業」において、「スクールAI」を活用した英語学習の実証研究が実施されました。
本研究は東京学芸大学を中心とする研究プロジェクトの一環として、東京学芸大学附属小金井小学校などで実施されました。

さらにVirtual Reality(VR)教材と組み合わせることで、英語コミュニケーション能力を育成すると同時に、異文化理解を促すことも目指しました。


英語を話す機会と個別練習の課題

英語教育ではコミュニケーション活動が重視されていますが、次のような課題がありました。

  • 英語を話す機会が限られている
  • ALTとの会話機会が限られている
  • 会話練習での即時的個別フィードバックの機会が不足している
  • 自分の英語を振り返る機会が少ない

こうした課題を背景に、本事業ではAIを活用した英語でのやり取りの可能性について実証研究が行われました。


検定教科書の学習内容に合わせてAIと英語でやりりする活動を「帯活動」で実施

本事業では、スクールAIを活用した英語でのやり取り活動が授業内で行われました。児童生徒はAIと英語で何度もやり取りを練習することができます。

授業では検定教科書の内容に合わせて、授業の目的に沿った会話練習を帯活動として継続的に実施し、AIと英語で話す機会を確保しました。

また、AIが

  • 発音
  • 表現
  • 会話内容

を分析し、良かった点や改善点を即時フィードバックする機能も活用しています。

教師は会話ログを確認することで、

  • 英語の理解度、学習方略(例:日本語の支援を求める、AIの英語のレベルを調整する)
  • 発話量
  • 学習状況
  • 学習時間

などを把握し、授業改善の参考とする取り組みも進めました。


本事業では、英語コミュニケーション活動の中でスクールAIを活用しました。
主に次のような場面で利用されています。

・人を相手にした発表ややり取りの準備練習
発表活動やスピーキング活動の前に、AIとの対話を通してターゲット表現の練習


英語で話す量が増加

スクールAIの会話ログの分析から、継続的な活用により英語での発話量が増加する傾向が確認されています。

例えば語彙力の高いグループ(注:語彙サイズテスト1000で850点以上だった児童)では

  • 発話語数:72語 → 83.64語
  • 発話回数:11.29回 → 15.79回

注:都内の小学校6年生(N=17)を対象に「スクールAI」を活用しはじめた6月と、9月の会話ログデータを比較したもの。
発話語数:AIとの1トピックのやり取り1回あたりの一人当たりの発話語数の平均値。
発話回数:AIとの1トピックのやり取り1回あたりの一人当たりの発話回数の平均値。1往復の応答で複数文が産出された場合であっても、1回としてカウント。

と増加し、英語で話す量が増えていることが分かります。

さらに、語彙力が高くない児童グループ(注:語彙サイズテスト1000で850点未満だった児童)においても、AIとの会話の中で多くの発話を行う傾向が見られ、日本語の支援を受けながらもあきらめずに英語でのやり取りに挑戦する姿が確認されました。

これらの結果から、AIとの対話環境が児童の発話機会の拡大と学習参加を促す可能性が示唆されています。


英語への自信と学習意欲の向上

スクールAIを帯活動で4回活用した単元終了後のアンケート結果(新潟県の公立小学校6年生(N=34))からは

  • 「スクールAIで練習したので、自信をもって発表できるようになった」に「とてもそう思う」「そう思う」と回答した児童は、67.7%
  • 同様に「不安なく発表できるようになった」に肯定的な回答をした児童は、67.6%
  • 「スクールAIを使ってもっと英語を勉強したい」への肯定的な回答は67.7%

するなど、スクールAIが英語学習にある程度良い影響を与える可能性が示唆されました。

本事業の実践を通して、教師の指導方法にも変化が見られました。

児童生徒がAIと個別に会話練習を行う活動を取り入れることで、教師は

  • つまずいている児童への個別支援
  • 実際のコミュニケーション活動の充実

により多くの時間を使うことができたという声が挙がっています。

また、各児童のAIとの会話ログを授業後に確認することで、学習状況を把握しやすくなり、評価の視点が広がったという報告もあります。

教員の声

これまでの授業では、児童一人ひとりが十分に英語を話す練習をする時間を確保することが難しい状況がありました。

AIとの会話練習を取り入れることで、児童が自分のペースで繰り返し英語を話す機会を確保できるようになりました。

AIは反復練習に適しており、教師はコミュニケーション活動を設計する役割を担うことが重要だと感じています。

本実践を通して、AIと教師の役割の違いも明らかになりました。

AIが得意とすること

  • 基本表現の反復練習の機会の提供
  • 個々のレベルに合わせた練習の機会の提供
  • 即時フィードバック

教師が担う役割

  • 相手を意識したコミュニケーションを促す
  • 児童の実態に合わせた学習目標の設定
  • 実際のやり取り活動での児童の様子から、適切なフィードバックを行う

児童からも、

「たくさん練習するならAI、仕上げは人」

という声が挙がっており、AIと人間の役割分担の重要性が示唆されています。


AIと教師の協働による英語学習の発展へ

今回の実践から、AIとの対話は英語の発話機会を広げる有効な手段となり得ることが示唆されました。
特に、言語レベルが異なる児童にも、英語でやり取りする機会を提供できる点は、大きな可能性といえます。

一方で、AIを活用するだけで学習が成立するわけではなく、教師による授業設計や学習活動との組み合わせが重要であることも明らかになりました。

スクールAIでは、こうした実践から得られた知見をもとに、AIと教師がそれぞれの強みを生かしながら学習を支える仕組みづくりを今後も進めていきます。

例えば、

  • 児童生徒の発話ログや学習履歴を活用した学習軌跡の分析
  • AIとの対話を授業設計に組み込んだ学習モデルの開発
  • 教員が授業の中でAIを活用しやすい環境づくり

などを通じて、AIと人が協働する新しい学習環境の実現を目指していきます。

スクールAIは、学校現場の実践とともに、AIを活用した学びの可能性をこれからも広げていきます。

  • 文部科学省「AIの活用による英語教育強化事業」において、小学生を対象にしスクールAIを活用した実証研究が行われ、英語で話す機会の拡大や児童の学習意欲の向上につながる可能性が示唆された。
  • AIとの英会話を帯活動として継続的に実施することで、発話語数や発話回数の増加など、発話量の向上につながる可能性が示唆された。
  • AIとの個別練習を適切に授業設計に組み込むことで、英語学習の新しい在り方を提示できるかもしれない。