玉川大学教育学部 濵田英毅先生

A:玉川大学教育学部で教授を務めております濵田英毅と申します。専門は日本近代史ですが、近年はSTEAM教育に注目し、歴史や地理をより身近に感じていただくための教材制作や、その社会実装に取り組んでいます。

A:「歴史人物シミュレーター」という、生成AIを活用して歴史上の人物86名との対話を可能にするアプリを開発しました。このアプリの最大の特徴は、単なる一問一答ではないという点です。生徒の日常生活や部活動などを例に出しながら、誰にでも分かりやすく歴史を説明してくれます。

特に重視したのが「問う力」のサポートです。探究学習において、生徒が適切な問いを立てられないことが大きな課題となっています。そこで、「どのように問えばよいのか」「なぜその問いが重要なのか」といった点を丁寧にサポートする仕組みを実装しました。

また、歴史のif(仮定)についても問うことができますが、その際は当時の文脈に即した回答をするようプロンプトを設計しています。これにより、より正確な歴史シミュレーションが可能となっています。

そもそも歴史とは、当時の人々の真摯な悩みと決断の積み重ねです。その意味で、歴史学習の本質は人物の追究にあります。当時の価値観や決断の背景、心情まで深く掘り下げることで、初めて本質的な歴史の学びが実現できるのです。

A:たとえば徳川家康との対話では、単に歴史的事実を問うだけでなく、「なぜ関ヶ原の戦いで勝利できたと思うか」といった深い洞察を促す問いかけが可能です。家康は当時の政治状況や自身の経験を踏まえながら、現代の生徒にも理解しやすい形で、日常生活や部活動に例えながら説明してくれます。

A:最も高い評価を得ているのが、生徒の生活実感に即したたとえ話や、問いの立て方の解説機能です。生成AIならではの、多面的・多角的な視点からのアプローチにより、生徒たちは自然と高次の思考プロセスを体験できています。

特に、時代像について話し合うような概念形成型の学習が、このアプリを通じて気軽にできるようになったという声を多くいただいています。知識の理解から概念の形成、さらには学習方略の獲得まで、幅広い学びをサポートできている点が高く評価されています。

A:生成AIの特性として、過度に個別具体的な知識を問うと、必ずしも正確な回答が得られない場合があります。教科書レベルを超える専門的な知識については、ハルシネーション(誤った情報の生成)が起きやすくなることに注意が必要です。

A:令和7年度からの正式リリースを予定しており、使い方の解説を含む参考書とアプリのライセンスをセットで提供する計画です。また、世界史の人物も含めて、さらにラインナップを充実させていく予定です。

A:生成AIは、私たち教育者の可能性を大きく広げてくれるツールです。「歴史人物シミュレーター」を通じて、生徒たちとより深い対話的な学びを実現していきましょう。共に新しい教育の可能性を追求できることを、心より楽しみにしています。

  • 濵田教授が開発した「歴史人物シミュレーター」は、生成AIを活用して86名の歴史上の人物との対話を可能にする画期的な教育アプリです。
  • 単なる一問一答ではなく、生徒の日常に即した説明や、「問う力」のサポート機能を備え、探究的で深い学びを実現します。
  • 知識の理解から概念の形成、学習方略の獲得まで、幅広い学習効果が確認されており、令和7年度からの正式リリースが予定されています。
  • 歴史教育のデジタルトランスフォーメーションを象徴する取り組みとして、今後の展開が注目されます。