
AIを授業の「学びのプロセス」に組み込む
― スクールAIによる英語教育の実践―
茨城県教育庁 学校教育部 義務教育課 虻川幸平指導主事
対象:県内10校の小中学校等(義務教育学校後期課程含む)
教科:英語
▼ポイント
- 対話練習、英文作成、振り返りなど、授業の流れの中でAIを活用
- AIを目的化せず、学びを深めるためのツールとして評価
- AIの個別フィードバックにより、生徒の学習意欲と粘り強さが向上
茨城県教育委員会では、県内10校のモデル校を中心に「スクールAI」の活用を進めています。
英語教育との相性の良さに着目し、AIを授業の中に自然に組み込む実践が広がっています。
モデル校では、生徒一人ひとりに寄り添うフィードバックや対話練習などにAIを活用し、英語学習への意欲の向上や学習プロセスの深化が見られています。
今回は、県全体の英語教育を担当する義務教育課の虻川幸平先生に、導入の背景や具体的な活用事例、今後の展望について伺いました。
Q:まずは自己紹介をお願いします。
茨城県教育庁 学校教育部 義務教育課の虻川幸平です。
県内の小中学校における英語教育(英語)を担当しています。
現在は、県内5つの教育事務所や各市町村教育委員会と連携しながら、英語教育の事業構築や、指導主事への指導・助言・支援を行っています。
県教育委員会の立場として、現場の学校へ直接指導する機会は限られますが、教育事務所や市町村教育委員会を通じて、県全体の英語教育の質の向上を支援しています。
Q:スクールAIの導入を決めたきっかけを教えてください
茨城県では以前から、これからの教育や教員の働き方を考えるとAIの活用は避けて通れないと感じていました。
特に英語教育においては、
- 個別にフィードバックができる
- 対話練習ができる
- 個人で英文の推敲ができる
といった点で、AIと非常に相性が良いと考えています。
そこで、県としてリーダーシップを発揮し、先進的な取り組みを推進する必要があると考え、スクールAIの導入に至りました。
Q:スクールAIを選んだ理由は何ですか?
AIの活用が授業とは別のものになるのではなく、あくまで授業の充実を補完する存在であることを重視しました。
具体的には次の点を重視して検討しました。
- 教育に特化した設計であること
- 教員や子どもたちが授業に合わせて柔軟にカスタマイズできること
- AI活用が「学習の流れ」として授業の中に自然に組み込めること
こうした観点でリサーチや意見交換を進める中で、スクールAIが理想に近いツールだと感じ、導入を決めました。
Q:具体的にどのような学校で、どのように活用されていますか?
現在、県内10校のモデル校で活用しています。
モデル校は、県内5つの教育事務所から2校ずつ推薦してもらう形で選定しました。
県・教育事務所・市町村が連携する形でモデル校を配置することで、県内全体へ活用ノウハウを広げていくことを目指しています。
茨城町立 明光中学校
英語の英作文添削だけでなく、
- 英会話練習
- 単語テスト
- 授業の振り返り
- 他教科の学習整理
など、学校全体で多様なオリジナルアプリを作成して活用しています。
県内でも特に活発に活用が進んでいる学校の一つです。
つくば市立 学園の森義務教育学校
公開授業では、AIを使うこと自体が目的になるのではなく、
より良い英文を作ることや学びを深めることを目的としてAIが活用されていました。
特に印象的だったのは、AIとの対話を通して、生徒が自分の学びを振り返る場面です。
授業の最後にはAIが生徒に問いかけを行い、生徒の回答に対してさらに質問を重ねることで、
自分の学びを言語化し、客観的に捉える「メタ認知」を促す仕組みが作られていました。
こうした活用は、AIを学習のプロセスに組み込み、生徒の思考を深める実践として特徴的な授業実践でした。
Q:導入後、現場の生徒や先生にはどのような変化がありましたか?
生徒の変化
英語を書く活動は学力差が出やすい分野ですが、AIが「個別の先生」のように寄り添う存在となり、多くの生徒が最後まで粘り強く課題に取り組むようになりました。
実際に、
「英語を書くことが苦手」と感じる生徒が15ポイント減少
というデータも出ています。
教員の変化
教員側にも変化が見られました。
現在では、
- 「AIに何を言わせるか」
- 「授業のどこで使うか」
を考えながら、先生自身がオリジナルのアプリを作るようになっています。
その結果、AIをきっかけに授業設計そのものを考え直す動きも生まれています。
Q:活用のノウハウを広めるための工夫はありますか?
単にツールを配布するだけでは活用は広がらないため、県として次の取り組みを行いました。
- 県独自の説明会の開催
- 具体的な授業活用例の紹介
- スクールAIのオンラインデモ
また、モデル校を
教育事務所ごとに配置する形で選定
したことで、地域ごとに情報が吸い上げやすく、ノウハウの共有が進みやすい仕組みを作っています。
Q:今後の展望を教えてください
来年度以降は、今年度の成果を踏まえ、市町村が独自に予算化して実装を進める動きも出始めています。
県としては、授業内での活用にとどまらず、「家庭学習」と「授業」がAIを介してつながるような仕組みなど、より先を見据えた学習モデルを提案していきたいと考えています。
今後は授業と家庭学習をつなぐAI活用モデルの構築と、県から市町村へ広げていく自治体展開モデルの確立を目指しています。
まとめ
スクールAIに関する資料をご提供しております。資料のダウンロードは以下よりお願いします。


