
登場人物と対話する道徳授業
仲川 和磨 先生
モード名:登場人物対話型AI(道徳教材活用モード)
対象:小学校高学年(児童)
教科:道徳(+社会科でも活用事例あり)
▼ポイント
・道徳教材の登場人物にAIがなりきり、児童が対話を通じて思考を深めるモードを開発
・社会科では開発者の立場にAIがなりきり、児童のアイデアを画像生成AIで視覚化するなどの実践も
・AIとの対話が子どもたちの気づき・内省・自己表現を引き出し、協働的な学びに広がっている
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Q:まずは自己紹介をお願いします。
A:札幌市立中央小学校の仲川和磨と申します。現在、校内ではICT推進委員および道徳推進担当教諭を務めています。本校はリーディングDX事業の指定校であり、生成AIのパイロット校としても取り組みを進めています。次年度も同様にICTや生成AIの活用を学校全体で推進していく予定です。
Q:作られているモードの名前と概要、その背景と目的を教えていただけますか?

A:私が作成したモードは、道徳授業における登場人物対話型のAIモードです。具体的には、教科書に出てくる登場人物の役割をAIに与え、そのキャラクターとしてAIと子どもたちが教材文の内容について対話できるように設計しました。
子どもたちは、授業中に登場人物の行動の背景を議論しますが、その後AIとの対話を通じて、新たな気づきを得たり、自分の考えを再構築したりすることができます。目的は、単なる情報の収集ではなく、思考を深め、実生活につなげる学びを促すことです。
Q:具体的な活用方法を教えていただけますか?

A:教材としては、5年生「ミレーとルソー」というB 友情・信頼をテーマにした教材文を使用しました。子どもたちは、ミレーのことを助けたルソーの立場を与えたAIと対話し、「なぜその行動を取ったのか」「その時どのような気持ちだったのか」といったことを探究していきます。
実際の対話では、「やさしさ」や「思いやり」など、表面的な理由だけではなく、もっと深い価値観や背景に気づく子どもの姿が見られました。1人1人が異なる返答を得るため、子ども同士で「自分はこうだった」と共有し合うことで、学びの広がりと深まりが自然に生まれました。
また、社会科では自動車産業を題材に、開発者の立場にAIがなりきって対話するモードも作成しました。さらに、生成されたアイデアを画像生成AIにかけて、イメージを可視化する活動も行いました。これにより、想像力と創造性を刺激する新たな学びも実現しています。
Q:実際の導入効果や教員・生徒の反応はいかがでしょうか?

A:子どもたちはAIとの対話を非常に楽しみながら取り組んでいます。特に、1人1人異なる返答が得られる点が興味深く、「こんな答えが返ってきたよ」と友達と共有し合う姿が見られました。これにより、学習が一方向的ではなく、対話的・協働的に深まっていく実感があります。
教員側からも、AIを通じて子どもたちの思考の幅が広がることや、普段は言語化が苦手な子が自分の考えを表現しやすくなるという点で、教育的な効果があるとの評価を得ています。特に道徳のような正解がない教科では、AIとの対話を通じて多様な視点を持つことができるのは大きな価値だと感じています。
Q:導入に際する注意点や浸透するための工夫について教えてください。
A:今回特に注意したのは、「教科書以外の情報をAIに与えすぎないこと」です。AIに余分な情報を入れすぎると、授業の目標から離れてしまい、本来の道徳教育のねらいを逸れてしまう恐れがあるからです。
また、使い方については、すでに児童がAIの操作に慣れているため、操作面での困難はあまりありませんでした。重要なのは、教師が授業の目的に合わせて適切な情報量と指示を設計し、子どもたちが混乱せずに対話を楽しめるような環境を整えることだと考えています。
Q:今後の展望についてお聞かせください。
A:今後は、道徳だけでなく他教科にもAIの対話を取り入れていきたいと考えています。特に、自己表現が苦手な子どもたちが、AIとの対話を通じて自分の考えを言語化しやすくなることは大きな可能性です。
AIはあくまで子どもたちの表現や思考を支える「土台」であり、それによって子どもたちのコミュニケーションや協働的な学びが活性化していけば良いなと考えています。自己理解と他者理解の深化を促すツールとして、今後もさらに探究していきたいです。
Q:スクールAIに興味を持っている先生方へメッセージをお願いします。
A:スクールAIの魅力は、自分でプロンプトを工夫してカスタマイズし、実際に子どもたちに合ったAI体験を設計できるところにあると思います。最初は難しく感じるかもしれませんが、試行錯誤しながら少しずつ改善していけるので、ぜひ一度触ってみていただきたいです。
また、プロンプトの工夫次第で、返答の質が大きく変わることも実感しています。まずは簡単なものからでも構いませんので、現場の実践に合わせて自由に活用してみてください。きっと子どもたちの反応に驚く場面があるはずです。