生成AIの活用が広がる中、学校現場では「AIを使うか、使わないか」ではなく、「AIとどのように向き合い、活用していくのか」を考える取り組みが始まっています。
今回のAI共育ラボ「AIリテラシー部」では、小学校・中学校・高校・教育委員会、それぞれ異なる立場からの実践が共有されました。
- 授業の中でAIをどのように扱っているのか。
- 子どもたちはAIとどのような距離感で関わっているのか。
- そして、AI時代だからこそ大切にしたい学びとは何か。
本レポートでは、4つの実践から見えてきた学びをご紹介します。
- AIを「答えをもらう道具」ではなく、「学びを深めるパートナー」として活用する実践
- AIの仕組みや限界を理解し、「AIを鵜呑みにしない力」を育てる授業事例
- AI時代だからこそ改めて問われる、教師の役割と人との関わり
- 小学校低学年から高校まで、それぞれの発達段階に応じたAIリテラシー教育の工夫
【今回の学び】
今回のAIリテラシー部では、小学校・中学校・高校・教育委員会と、それぞれ異なる立場からの実践が共有されました。
授業の内容や対象は違っていても、どの実践にも共通していたのは、
「AIを使うこと」そのものではなく、「AIとどう向き合うか」を子どもたちと一緒に考えていたこと。
便利だから使う、危険だから使わない、といった二択ではなく、AIとどのように付き合い、どのように活用していくのか。
その問いに向き合う先生方の試行錯誤から、多くの学びを得ることができました。
実践共有
■AIは「答えをもらうため」だけのものではない

佐藤先生からは、小学校6年生を対象に実施した
「AIは楽をさせてくれるの?それとも成長させてくれるの?」
というテーマの授業実践が紹介されました。
授業前のアンケートでは、ほとんどの児童が授業以外で生成AIを使った経験があり、8割以上が「便利」と回答していました。
一方で、宿題の答えを聞いたり、感想文を書いてもらったりといった活用も見られ、子どもたちにとって生成AIがすでに身近な存在になっていることが分かりました。
授業では、
- 宿題の感想文をAIに丸ごと書いてもらう児童
- 自分で書いた後にAIから改善のヒントをもらう児童
の事例を比較し、「どちらが自分のためになっているだろう?」と考えました。
その後、子どもたちはグループで「丸投げプロンプト」を改善する活動に挑戦します。
例えば、
「日光の歴史についてまとめて」
という依頼を、
「5分でわかる動画を作って」
「もっと分かりやすくするためのアドバイスを教えて」
といった、自分の理解や成長につながるプロンプトへと変えていきました。
振り返りでは、
「全部教えてもらうより、自分で考えた方が成長できる」
「ヒントをもらう方が勉強になる」
といった声も見られました。
AIを使うこと自体ではなく、
「AIを使ってどう学ぶのか」
を考える授業だったことがとても印象的でした。
■AIの仕組みを知ることが、上手に付き合う第一歩になる

山本先生からは、
「生成AIは一体何者なのか」
をテーマにした中学校での実践が紹介されました。
この授業では、実際にAIを使う前に、まずAIの仕組みや特徴を理解することに重点が置かれていました。
印象的だったのは、「むかしむかし」の続きを考える活動です。
多くの人が自然と「あるところに」と続けるように、
生成AIも言葉のつながりから次の言葉を予測していることを体験的に学びました。
また、
「三角を1つ、丸を2つ、四角を3つ描いてください」
という指示でも、人によって描くものが異なることを通して、
- 同じ指示でも結果は変わる
- 曖昧な指示では意図した結果にならない
という生成AIの特徴を理解していきました。
さらに、
「社会が分からないから教えて」
という曖昧な質問では、学習の「社会科」ではなく「社会そのもの」について説明されてしまう例も紹介されました。
AIが期待した答えを返さない時、
「AIが悪い」と考えるのではなく、
「自分の質問の仕方はどうだっただろう」
と振り返る視点を持つことも大切であることが伝えられていました。
また、
- 存在しない学校について回答してしまう
- 事実ではない内容をもっともらしく話してしまう
といったハルシネーションについても取り上げられ、
「AIの答えを鵜呑みにしないこと」
の大切さが共有されました。
AIの操作方法を学ぶ前に、AIの特徴や限界を知ること。
その積み重ねが、適切な活用につながることを改めて感じる実践でした。
■AI時代だからこそ、人との関わりを考える

瓦田先生からは、全校生徒25名の離島の高校で行われている取り組みが紹介されました。
生徒への指導だけでなく、まずは教職員が生成AIについて学び、共通理解を持つことを大切にされていることが印象的でした。
職員研修では、
- AIは社会のインフラになっていくこと
- AIはあくまで補助ツールであること
- 最終的に判断するのは人間であること
- ハルシネーションやバイアスの存在
などを共有しながら、教職員自身のAIリテラシー向上に取り組まれていました。
また、生徒に対しては情報モラル教育や最新ニュースを活用した意見交換を行い、
- 情報を複数の視点で見ること
- AIの回答をそのまま信じないこと
- 自分自身で判断すること
を大切にしているとのことでした。
その中でも特に印象的だったのは、
「AIが社会のインフラになるからこそ、教師による人間的な関わりがより重要になる」
という言葉です。
AIによって情報収集や文章作成が効率化される一方で、
- 子どもに寄り添うこと
- 一緒に悩むこと
- 成長を支えること
といった役割は、人だからこそできるものです。
AIが発展する時代だからこそ、学校や教師の価値について改めて考えさせられる実践でした。
■「本当かな?」と立ち止まる経験をつくる

内田先生からは、小学校2年生を対象に行われた
「うそをつくAI転入生」
の実践が紹介されました。
生成AIに興味を持つ子どもたちに対して、
- AIの答えを鵜呑みにしないこと
- 自分で確かめること
- 最後は自分で判断すること
を体験的に学んでもらうための工夫として生まれた実践です。
クラスには、
- ヒントを出すフクロウ
- 考えを整理するライオン
- 確かめるきっかけを作るネコ
- 気持ちを聞く犬
- 安全を守るウサギ
という5人のAI転入生が登場します。
その中でもネコは、時々事実とは異なることを話します。
すると子どもたちは、
「本当かな?」
「どうやって確かめる?」
「どこがおかしいんだろう?」
と自然に考え始めます。
AIを信じるか信じないかではなく、
まず確かめてみる。
その経験を積み重ねることで、情報を見極める力が育まれていきます。
また、AIを使う側から、
AIを設計し、制御する側へ。
という考え方も非常に印象的でした。
子どもたち自身がAIの性格や役割を考え、プロンプトを工夫しながら関わることで、
「AIは人が設計するもの」という感覚を自然と身につけていきます。
低学年だからこそ、体験を通してAIとの適切な距離感を学ぶ実践として、とても興味深い取り組みでした。
■4つの実践を通して感じたこと
今回紹介された4つの実践は、対象も方法もそれぞれ異なっていました。
しかし共通していたのは、
- AIは便利な道具であること
- AIは万能ではないこと
- AIの答えを鵜呑みにしないこと
- 最後に判断するのは人間であること
を大切にしていたことです。
そしてもう一つ印象的だったのは、
「AIを使う側から、AIを使いこなす側へ」
という視点でした。
より良い問いを考えること。
AIの特徴を理解すること。
情報を確かめること。
自分で判断すること。
こうした経験を通して、子どもたちはAIを単なる便利なツールとしてではなく、
自分の学びや成長に活かすためのパートナーとして捉え始めているように感じました。
AIを「使うか、使わないか」ではなく、
AIとどう付き合っていくのか。
今回の先生方の実践は、その問いを考える多くのヒントを与えてくれる時間となりました。
開催概要
- イベント名:AI共育ラボ AIリテラシー部 第2回
- テーマ:授業実践 ~教室で起きた、AIとの試行錯誤~
- 開催日:2026年6月15日(月)20:00~21:00
- 開催形式:オンライン
AI共育ラボについて
AI共育ラボは、学校・塾・教育委員会の先生方が集い、生成AIの活用やAIリテラシー教育について実践を共有しながら学び合うコミュニティです。
■次回開催のお知らせ
AI共育ラボ「AIリテラシー部」は来月も開催予定です。
次回のテーマは、
「AIリテラシー教育、その後を語ろう。」
~実践事例と参加者の問いから考えるAIとの向き合い方~
前回の実践共有では、
・AIリテラシーとは何を指すのか
・どこまで教えるべきなのか
・AI活用と考える力は両立できるのか
など、改めて考えたいテーマも見えてきました。
といった多くの問いが参加者から寄せられました。
次回は、こうした問いを出発点に、参加者同士で対話しながらAIリテラシー教育について考えていきます。
正解を学ぶ場ではなく、現場で感じている悩みや迷い、実践してみたこと、子どもたちとの対話から見えてきたことを持ち寄りながら、AI時代の学びや教育のあり方を一緒に探究していきます。
AIリテラシー教育に関心のある方は、ぜひご参加ください。
次回お申込み:https://ai-community0713.peatix.com
■ 本イベントに関するお問合せは、下記までお気軽にお問い合わせください。
株式会社みんがく
E-mail:info@mingaku.net
TEL:03-4335-3965
