【開催レポート AI共育ラボ 授業部】「AI活用の次の一手」を考える――授業を、学びを、どうデザインする?


2026年8月26日にAI共育ラボ「授業部」を開催しました。

今回の授業部では、学校現場で実際に生成AIを活用している先生方から、それぞれの実践を紹介していただきました。

授業準備や教材づくり、生徒の学び直し、学習ログの分析、そして生徒との面談まで――。

AIの活用場面はさまざまですが、今回の実践に共通していたのは、「AIを使うこと」そのものを目的にしていないことでした。

「子どもの学びをどう深めるか」
「先生と生徒の対話をどう豊かにするか」
「AIが当たり前になる学校で、人は何を大切にするのか」

実践と対話を通して、AI活用の「次の一手」について考える時間となりました。


今回の学びのポイント

今回の授業部では、主に3つの視点が共有されました。

01|AIは「答えを出す道具」ではなく、学びや対話を支えるパートナー

授業準備、復習、問いづくり、学習ログの分析など、AIにはさまざまな活用方法があります。

今回紹介された実践では、AIに答えを任せるのではなく、教師や子ども自身の思考を支えるためにAIを位置づけていることが印象的でした。

大切なのは「AIで何ができるか」だけではなく、

「この学びを、どう深めたいのか?」

という授業の目的からAIの使い方を考えることです。

02|AIによって「見えなかった学び」が見えてくる

学習ログやAIとの対話履歴を活用することで、これまで成果物や発表だけでは捉えにくかった、子どもの思考の変化や学びのプロセスを捉えられる可能性があります。

AIは、子どもの学びを「評価するため」だけではなく、一人ひとりの学びを理解し、次の声かけや授業改善につなげるための道具にもなります。

03|AIで効率化するからこそ、「人と人との対話」がより大切になる

AIによって、一人でできることは確実に増えています。

だからこそ、これからの学校では、

「AIに任せること」と「人が担うこと」

を改めて考える必要があります。

今回の実践では、AIを使って教師の仕事を効率化するだけでなく、その先にある「生徒と話す時間」「先生同士で考える時間」「生徒自身の自己調整を支えるメタ認知コーチ」としての働きを大切にする姿勢も共有されました。


実践発表① 日本体育大学柏高等学校 新堀朔也先生

授業準備から生徒の学び直し、校務まで広がるAI活用

日体大柏高等学校で国語を担当する新堀先生からは、個人としてのAI活用と、学校全体でAIを活用していくための取り組みについて紹介いただきました。

教員2年目という立場から、日々の授業の中でどのようにAIを活用しているのか、具体的な事例が共有されました。

授業準備の「壁打ち相手」として

単元の流れや次の授業の展開、問題づくりなど、授業準備のさまざまな場面でAIを活用。

自分一人で考えるのではなく、AIを「壁打ち」の相手として使うことで、授業を考える際の視点を広げています。

生徒がいつでも学び直せる環境をつくる

漢文のレ点練習など、生徒が自分で取り組める学習アプリも作成。

紙のプリントを配って一度説明して終わりではなく、生徒が自分のタイミングで何度でも振り返れる環境をつくっています。

特に、最初につまずくことで「漢文が嫌い」になってしまう生徒に対しても、自分のペースで練習できる場を用意するという視点がありました。

AIとの対話を取り入れた学習

入試問題の分析などでは、教師が一人ひとりの生徒と対話するには時間的な限界があります。

そこで、教師側で設定したAIを生徒に使ってもらい、生徒自身がAIと対話しながら考える活動も実践されています。

校務にも広がるAI活用

授業だけではなく、議事録の作成やレポート評価などにもAIを活用。

また、自分が使っているプリントや教材をAIに読み込ませてデジタル化し、他の先生や生徒にも共有しやすくすることで、「自分だけが使える教材」から「学校で共有できる教材」へと広げる工夫も紹介されました。

そして、新堀先生が最後に語ったのは、

「生成AIをどう位置づけるか」

ということ。

生成AIから何を得て、それをどう生徒のために使うのか。

単にAIの便利な機能を紹介するのではなく、教育の目的にAIをどう位置づけるかという視点が、実践全体を貫いていました。


実践発表② 日本体育大学柏高等学校 熊井允人先生

生徒との「面談」を支えるAI活用

続いて、日体大柏高等学校の熊井先生からも、ご自身の実践について紹介いただきました。

テーマは、生徒との面談におけるAI活用です。

日体大柏高等学校では、生徒との面談を大切にしており、年間複数回の面談を実施しています。

その中で熊井先生が取り組んでいるのが、面談の前後でAIを活用する方法です。

面談前に、自分の考えを整理する

面談の前に、生徒がスクールAIを使って、自分の状況や考えていることを整理します。

いきなり先生と話すのではなく、まずAIとの対話を通して自分の考えを言葉にしておくことで、面談で話したいことを整理した状態で先生との対話に臨みます。

面談後もAIと対話する

面談が終わった後も、AIを使って面談で話した内容や、自分が感じたことなどを整理。

熊井先生がこの活用を行う理由として挙げたのが、

「生徒ともっと話したい」

という思いでした。

AIに面談を任せるのではありません。

むしろAIに事前整理や振り返りを担ってもらうことで、先生自身が生徒との対話により時間を使えるようにする。

AIを「人との対話を代替するもの」ではなく、「人との対話をより良くするためのもの」として使う実践です。


実践発表③ 鹿児島市立小山田小学校 山口小百合先生

「検索だけで終わらない」社会科の学びへ

鹿児島市立小山田小学校の山口先生からは、小学校社会科での生成AI活用について紹介いただきました。

テーマは、

「検索だけで終わらない、社会科の学びの深め方」

です。

山口先生は、生成AIを活用すること自体を目的にするのではなく、社会科の学びを深めるための手段としてAIを活用することを大切にしています。

「調べて終わり」から、その先へ

検索して情報を集め、発表して終わるのではなく、

  • 情報を比較する
  • 関係づける
  • 「なぜ?」を考える
  • 別の視点から捉える
  • 自分自身との関わりを考える

といった活動を通して、事実を知るだけではなく、そこからさらに考えを深めていきます。

そのために山口先生は、プロンプトに、社会的な見方・考え方や思考スキルについて、子どもたちが気付けるような設定を取り入れています。

AIとの対話を通して、子どもたちが気付いた社会的な見方・考え方や思考スキルを、自分が考える際の視点として生かしたり、学習を振り返る際に意識したりすることにつなげています。

こうして、AIとの対話をきっかけに、子どもたちがさまざまな視点から考えたり、自分の考え方を振り返ったりしながら、学びを深めていきます。

本場大島紬を題材に、問いが変化していく

実践では、奄美大島の伝統的工芸品「本場大島紬」を題材に学習。

最初は、

「たくさんの工程で長い時間をかけて作っている」
「職人が手作業で作っている」

といった事実への気づきからスタートした子どもたちの問いが、学習を進める中で、

「なぜ大変な作業を続けるのか?機械化すればいいのではないか?」

「奄美大島以外の所で作ることはできるのか?」
「洋服やバッグになっても伝統的工芸品と言えるのか?」
「自分にできることは何だろう?」

と変化していきました。

「本場大島紬」という名称にも着目し、国が指定する「伝統的工芸品」とは何か、どのような条件があるのかを考えることで、単に「昔から続く伝統文化」として捉えるのではなく、産地や製法、文化とのつながりから考える学びへと広がっていきます。

AIとの対話を取り入れることで、子どもたちの問いが、「知りたい」から「考えたい」、そして「自分はどう関わるか」へと広がっていったことが紹介されました。


AIだからこそ見えてきた「子どもの学び」

山口先生の発表後には、参加者から学習ログの分析や、子どもの学びの変容について質問が寄せられました。

Q|子どもの学びの変容を、どのように捉えていますか?

山口先生からは、子ども一人ひとりの学習ログや成果物を、学習の最初から最後まで見ていくことで、学びの変化を捉えているとの説明がありました。

これまでも教師は、ノートや成果物、発表などを通して子どもの学びを見取ってきました。

一方で、学習ログが残ることで、「その子がどのように考え、どのように考えを変化させたのか」をより詳しく捉えられるようになります。

さらに、学習ログをまとめてAIに読み込ませ、「フェーズ1からフェーズ4までにどのような変容があったのか」を分析させることで、学びの変化を整理する方法も紹介されました。

Q|こうした分析は、専門的な知識がなくてもできる?

ここでも、AI活用による可能性が話題になりました。

これまでは、テキストマイニングなどの専門的な知識が必要だった分析も、AIを活用することで、専門家でなくても学習ログから子どもの学びを捉えることができるようになってきたという実感が共有されました。

「分析できる人だけができること」だったものが、AIによって、より多くの先生に開かれていく。

そんな可能性も感じられる対話となりました。


熊井先生が語る「次の一手」

AIで一人で作れる時代に、私たちは「誰と」つくるのか?

実践発表に続いて、熊井先生からは、AI活用を学校全体へ広げていく上での「次の一手」についてのお話がありました。

生成AIによって、授業案や教材、マニュアルなど、これまで複数人で時間をかけて作っていたものを、一人でも短時間で作れるようになってきています。

しかし、

「一人で作れること」と「学校で実現できること」は同じではありません。

学校で何かを変えていくためには、先生同士が話し合い、共通認識をつくり、それぞれの考えや立場をすり合わせていく必要があります。

熊井先生が示したのは、

「AIで一人で作れる時代に、私たちは誰と作るのか」

という問いでした。

AIで効率化するからこそ、人と話す

AIによって仕事を効率化できるからこそ、その分生まれた時間を何に使うのかが重要になります。

それを「さらに仕事をする時間」にするのではなく、

  • 生徒と話す
  • 先生同士で話す
  • 授業について考える
  • 学校として何を大切にするかを話す

といった、人にしかできない対話の時間にしていく。

AI活用の先にあるのは、実は「人との関わり」なのかもしれません。

学校全体でAIを使うために

熊井先生からは、学校全体でAI活用を進める際には、単に「AIを使いましょう」と呼びかけるだけではなく、

「なぜ使うのか」
「何のために使うのか」
「どう使えばよいのか」

を共有することの大切さも語られました。

学校としての方向性を示しながらも、「使う/使わない」の二項対立にしてしまうのではなく、それぞれの先生が自分の実践の中でAIをどう位置づけるのかを考えられる環境をつくる。

そのためのマニュアルや仕組み、管理職からのメッセージ、先生同士の対話など、技術だけではなく「人と組織」の側からAI活用を支えることが、次の一手として示されました。


先生方との対話から見えたこと

今回の対話では、AIの「便利な使い方」だけではなく、学校でAIを活用していく上でのさまざまなリアルな課題についても話が広がりました。

AIを使う時間を確保できる先生もいれば、なかなか時間を取れない先生もいます。

また、そもそも「何をより良くしたいのか」という目標自体も、先生によって異なります。

熊井先生からも、先生それぞれの置かれている状況やモチベーションは異なるため、単純に「AIを使えばよい」という話ではないという考えが共有されました。

だからこそ、これからはさまざまな実践を持ち寄りながら、

「この先生は、何のためにAIを使ったのか?」

「AIを使ったことで、何が変わったのか?」

「その実践を学校でどう共有できるのか?」

を対話していくことが重要になります。


今回のまとめ

AI活用の「次の一手」は、AIの先にある。

今回紹介された実践は、それぞれ異なるものでした。

新堀先生は、授業準備から教材づくり、学び直し、校務まで、AIを日々の教育活動に取り入れていました。

熊井先生は、AIを使って生徒自身の考えを整理することで、先生と生徒が対話する面談そのものをより豊かにする実践を紹介しました。

山口先生は、プロンプトに、社会的な見方・考え方や思考スキルについて気付かせるように設定すること、

それにより、子どもたちが考える際の視点にしたり、意識して振り返ったりすることができ、学びが深まるということです。

AIとの対話を通して、子どもたちが、ヒト・モノ・コトを「調べる対象」として事実的知識だけ集めて終わるのではなく、「考える材料」として、その意味や特色や関係を考えていくようになる、さらに学習ログからその学びの変容を捉える実践を紹介しました。

一見すると、使っている場面も方法も違います。

けれど、その根底には共通するものがあります。

それは、

「AIを使うこと」を目的にしないこと。

AIを使って、

子どもの学びをどう深めるのか。
先生と生徒の対話をどう豊かにするのか。
先生同士でどう学び合うのか。
そして、AI時代の学校をどうつくっていくのか。

を考えていることです。

AIによって、一人でできることはこれからも増えていくでしょう。

だからこそ、これから問われるのは、

「AIで何ができるか」だけではなく、
「AIを使って、誰と、何をつくるのか」。

なのかもしれません。

AI共育ラボ 授業部では、これからも先生方の実践を持ち寄りながら、AIの「使い方」だけではなく、AIとともにこれからの授業・学校をどうつくっていくのかを、一緒に考えていきます。


開催概要

  • イベント名:AI共育ラボ 授業部 第2回
  • テーマ:学校のAI活用、次の一手。― 実践から考える「広げ方」 ―
  • 開催日:2026年8月26日(水)21:00~22:00
  • 開催形式:オンライン

AI共育ラボについて

AI共育ラボは、学校・塾・教育委員会の先生方が集い、生成AIの活用やAIリテラシー教育について実践を共有しながら学び合うコミュニティです。


■次回開催のお知らせ

AI共育ラボ「特別支援部」始まります!

次回のテーマは、

「AIがニューロダイバーシティをサポートする未来へ」

このたび、AI共育ラボ内の実践コミュニティ「特別支援部」がスタートします!

記念すべき第1回は、
「AIがニューロダイバーシティをサポートする未来へ」をテーマに、徳島県立国府支援学校 今井明人先生をお迎えします。

特別支援教育の現場では、一人ひとりの得意・不得意や困りごとに合わせた支援が大切にされています。

そこにAIが加わることで、どんな新しい可能性が生まれるのでしょうか?

今井先生は、学校生活や進路、心の面で生徒をサポートするためのAI活用に取り組んでいます。

実際に生徒たちとAIを使いながら、
「やってみて、実際どうだったのか?」
を大切に、実践を積み重ねてきました。

どんなところから始めたのか。
実際に生徒たちと使ってみて、何が見えてきたのか。
今年度は、そこからどんな取り組みに発展しているのか。

そして、これからの特別支援教育とAIについて、どんな未来を描いているのか。

現場でのリアルな経験をもとに、お話しいただきます。 


■ 本イベントに関するお問合せは、下記までお気軽にお問い合わせください。

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