【開催レポート AI共育ラボ リアル会】10年後の教育現場でのAI活用を創造する――実践者とともに考えた、これからの学びと教師の役割


AIが教育現場に少しずつ浸透し、「AIを使うか、使わないか」という議論だけでは捉えきれない段階に入っています。

では、10年後の教育現場では、AIはどのような存在になっているのでしょうか。そして、そのとき学校で大切にしたい学びや、教師の役割とは何なのでしょうか。

普段はオンラインで開催している「AI共育ラボ」。今回は、一般社団法人教育AI活用協会(AIUEO)が主催する『教育AIサミット2026』内の『先生AIサミット』で、いつもとは少し違う「リアルの場」で開催しました。

テーマは、「10年後の教室を創造する100人未来会議」。

異なる校種・立場でAI活用に取り組む3名の先生方から、それぞれの実践を伺いながら、会場に集まった皆さんと、これからの教育について対話しました。

今回の会で考えたこと
01|AIの活用は、すでにさまざまな形で始まっている

実際の教育現場では、授業や学習の中でAIを取り入れるさまざまな実践が生まれています。3名の先生方から、それぞれの実践や、実際に使ってみて感じていることを伺いました。


02|AIを使うことで、「評価」や「学び方」について新しい問いが生まれる

AIを使うことで便利になる一方、「それをどう評価するのか」「子ども自身の学びとは何か」など、これまでとは少し違った視点から考えてみたい問いも生まれてきます。


03|10年後を考えることは、これからの学校や教師の役割を考えること

AIが当たり前になったとき、学校には何が残るのか。教師にはどんな役割があるのか。10年後の教育現場を想像することを通して、今の教育で大切にしたいことについても考える時間になりました。

まずは、現場で進むAI活用から

最初にお話していただいたのは、日本体育大学柏高等学校の熊井允人先生

学校の新しいコースづくりに関わる中で、AIを単なる新しいツールとして導入するのではなく、「これからの学校でどのような学びを実現したいのか」というところから教育のあり方を考えていることが紹介されました。

特に印象的だったのは、「AIを使う・使わない」という二項対立ではなく、その間にある「幅」を広げていきたいという考え方です。

AIやICTを導入することそのものを目的にするのではなく、これまでの教育実践の中で培ってきたものも大切にしながら、学びの形を少しずつ変えていく。そうした視点から、学校のコース設計や授業、評価のあり方について試行錯誤が続けられています。

続いて、戸田市立戸田第一小学校の佐藤陽介先生からは、小学校での実践を中心に紹介がありました。

佐藤先生が大切にしているのは、いきなり子どもたちにAIを渡すのではなく、まず教師自身がAIを使ってみること。

校務での活用から始め、文章の推敲やプロンプトの作成など、先生方が日常的にAIを使う機会をつくりながら、AIに「できること/できないこと」を学校の中で共有してきました。

授業でAIを活用する際にも、教師が間に入り、子どもたちがAIとの対話を通して自分の考えを深められるような場を設計しています。

一方で、AIによって作られたと思われる成果物が提出されるなど、実践の中での難しさも紹介されました。

だからこそ、「AIが良い・悪い」ではなく、「AIとどう向き合うか」を子どもたちと一緒に考えていくことが大切だという話につながりました。

そして、練馬区立大泉中学校の山本康太先生からは、学校全体でAI活用を進めてきた取り組みが紹介されました。

教員向けの研修、生徒向けのリテラシー教育、全教員による研究授業、公開授業など、個人の実践にとどめず、学校全体・地域全体へと活用を広げていくための取り組みです。

AIを導入すれば自然に活用が進むわけではありません。リテラシーやモラルをどう育てるのか、教師がどのように学ぶのか、学校としてどのような仕組みをつくるのか。

実践を通して、AI活用を「個人のスキル」ではなく「学校全体の学び」として捉えていることが伝わりました。

「AIを使うと、評価はどうなる?」から始まった対話

実践紹介の後は、参加者も交えた対話へ。

最初に出たのは、「AIを授業に取り入れたとき、これまでの成果物を中心とした評価はどう変わっていくのか」という問いでした。

AIを使えば、これまで時間をかけて作っていた成果物を短時間で作ることもできます。

だからこそ、「何を評価するのか」「そもそも、なぜその成果物を作るのか」という、これまで当たり前だった部分から問い直す必要があるのではないか。

熊井先生からは、学校での評価のあり方そのものを見直す中で、AIを特別なものとして扱うのではなく、学びのための一つの道具として捉えていく考え方が紹介されました。

AIを使ったから評価が難しくなるのではなく、AIがあることで「何を学んでほしいのか」「何を見取りたいのか」を改めて考えるきっかけになる。

そんな視点が共有されました。

AIが当たり前になったとき、学校に残るものは?

さらに対話は、「10年後の教師の役割」へと広がっていきました。

AIによって、知識を得たり、分からないことを調べたりすることが、今よりも簡単になっていく。

小学校の実践からは、子どもが分からないことをAIに尋ねることで理解につながる可能性や、AIによってインプットが効率化されるからこそ、これからは「アウトプット」や「対話」がより重要になるのではないか、という話がありました。

また、AIやICTによって一人ひとりの学習を支えられるようになるほど、教師には、子どもの表情や様子を見取り、必要なときに寄り添うことや、子ども同士が意見をぶつけ合い、考えを変えていくような学びを支えることが求められるのではないか、という意見も出されました。

AIが学びを支える存在になるほど、「人にしかできないこと」を改めて考える必要がある。

そんな問いが、会場全体に投げかけられました。

「10年後」を考えることは、「明日」を考えること

今回の対話を通して見えてきたのは、10年後の教育を考えることは、遠い未来を予測することではない、ということでした。

AIはすでに学校に入り始めています。

だからこそ、「AIを使うか、使わないか」だけを考えるのではなく、

何のために学ぶのか。
何を子どもたちに身につけてほしいのか。
教師だからこそできることは何なのか。
そして、AIをどのように学びの中に位置づけていくのか。

そうした問いを、実践しながら、学校の中で、そして先生同士で考え続けていくことが、10年後の教育をつくっていくのかもしれません。

今回のAI共育ラボも、答えを一つに決める場ではなく、それぞれの現場に持ち帰る問いを見つける時間となりました。


開催概要

先生AIサミット『10年後の教室を創造する100人未来会議』

  • 登壇者:
    • 日本体育大学柏高等学校 熊井允人先生
    • 戸田市立戸田第一小学校 佐藤陽介先生
    • 練馬区立大泉中学校 山本康太先生
  • 会場:「教育AIサミット2026」内
  • 日時:2026年8月7日(金)
  • 場所:衆議院第一議員会館 多目的ホール ステージ②
  • 本セッション(AI共育ラボ リアル会)参加者:約60名
編集後記
本セッション(AI共育ラボ リアル会)には、約60名の方に会場へ足を運んでいただきました。

「10年後の教育現場でのAI活用を創造する」という少し先の未来をテーマにした会でしたが、これだけ多くの方と同じ場所で一緒に考える時間を持てたことを、私たち自身とてもうれしく感じています。

AIについて、実際の活用方法を知るだけではなく、「AIを使うと、評価はどうなる?」「AIが当たり前になったとき、学校に残るものは?」といった問いについて、立場や経験の異なる方々と考えられたことも、今回の会ならではだったように思います。

そして何より、こうしたテーマにこれだけ多くの方が足を運んでくださったことに、私たちも驚きました。

AIをめぐっては、まだ答えの出ていないこともたくさんあります。だからこそ、実践を共有しながら、ときには立ち止まって考えたり、意見を交わしたりする。そんな時間を、これからも皆さんと一緒につくっていけたらと思います。

ご参加いただいた皆さま、そして今回、率直な実践や思いをお話しいただいた先生方、本当にありがとうございました。

AI共育ラボについて

AI共育ラボは、学校・塾・教育委員会の先生方が集い、生成AIの活用やAIリテラシー教育について実践を共有しながら学び合うコミュニティです。


■次回のAI共育ラボのお知らせ

AI共育ラボ「特別支援部」始まります!

次回のテーマは、

「AIがニューロダイバーシティをサポートする未来へ」

このたび、AI共育ラボ内の実践コミュニティ「特別支援部」がスタートします!

記念すべき第1回は、
「AIがニューロダイバーシティをサポートする未来へ」をテーマに、徳島県立国府支援学校 今井明人先生をお迎えします。

特別支援教育の現場では、一人ひとりの得意・不得意や困りごとに合わせた支援が大切にされています。

そこにAIが加わることで、どんな新しい可能性が生まれるのでしょうか?

今井先生は、学校生活や進路、心の面で生徒をサポートするためのAI活用に取り組んでいます。

実際に生徒たちとAIを使いながら、
「やってみて、実際どうだったのか?」
を大切に、実践を積み重ねてきました。

どんなところから始めたのか。
実際に生徒たちと使ってみて、何が見えてきたのか。
今年度は、そこからどんな取り組みに発展しているのか。

そして、これからの特別支援教育とAIについて、どんな未来を描いているのか。

現場でのリアルな経験をもとに、お話しいただきます。 


■ 本イベントに関するお問合せは、下記までお気軽にお問い合わせください。

株式会社みんがく
E-mail:info@mingaku.net
TEL:03-4335-3965