記事概要
つくばみらい市立谷和原中学校では、昨年度は英語科でスクールAIを活用していました。今年度からは学校全体での導入が始まり、冨田先生も4月から理科の授業で活用しています。今回は、エネルギーミックスを題材にした探究授業で、シミュレーションとスクールAIを組み合わせた実践を取材しました。
本記事では、シミュレーションゲームや授業支援ツール、「スクールAI」を活用した授業のリアルな流れをご紹介します。さらに、冨田先生と生徒さんへのインタビューを通して、AIを取り入れた授業で、先生や生徒がどのような変化を感じているのかをお届けします。
授業の概要
- 授業者: つくばみらい市立谷和原中学校 冨田 脩平先生
- 単元・テーマ: 中学校3年 理科 / 安定したエネルギー確保と環境保全(エネルギーミックス)
- 使用ツール: SDGsエネルギー学習推進ベースキャンプ「エネルギー戦略ゲーム」(シミュレーションゲーム)、授業支援ツール(結果の共有・比較)、スクールAI(振り返り・対話)
- 本時の課題: 「国の立場として、安定してエネルギーを確保するにはどんな発電プランを提案するか?」

授業の流れ
1⃣ 導入・課題提示(約5分)
2⃣ ルール説明・シミュレーションの進め方(約5分)
3⃣ 個人ワーク:シミュレーション実行&データ収集(約15分)
4⃣ 分析・考察ワーク(個人&グループ共有)(約15分)
5⃣ 全体共有・先生による解説(エネルギーミックス)(約5分)
6⃣ スクールAIを活用した振り返り・提出(約5分)
授業実践レポート
1. 導入:「もし自分が国の政策立案者だったら?」課題の提示
授業の冒頭、先生から本時のテーマが投げかけられます。
「今日の課題は『国の立場として、安定してエネルギーを確保するにはどんな発電プランを提案するか』です。みんなは国を治める立場になって、どの発電方法をどれくらい使うかシミュレーションして決めていきます」
生徒たちは手元のワークシートを確認しながら、授業に臨みます。
2. ルール説明:コスト・発電量・CO2排出量のバランスを考える
続いて、電子黒板を使ってシミュレーションゲームのルールが説明されました。
- 予算: 3,000万マネーの範囲内で発電施設を購入。
- 評価軸:
- 発電力(プラスポイント)
- CO2排出量(環境負荷=マイナスポイント)
- 発電方式: 火力(石油・石炭・天然ガス)、原子力、再生可能エネルギー、水力など。
- 変動要因: ゲーム進行中、天候カード(晴れ・曇り・台風)や社会情勢カード(政府の再エネ導入政策など)が5回めくられ、結果に影響を与える。
先生からは「本気で高得点を狙うプランだけでなく、あえて火力全振りや水力全振りのような極端な仮説を立ててデータを出してみるのもOKです」とアドバイスがあり、生徒たちの実験意欲が高まります。
3. シミュレーション実行:試行錯誤とデータ収集
生徒たちはプリントのQRコードをタブレット端末で読み込み、シミュレーションを開始。
「残金がいくらあるか確認しながらやってみよう」 「やり方がわからないときは近くの人と相談してね」

教室のあちこちから「原子力にしてみた」「台風が来た!」「太陽光だと発電量が不安定かも」といった声が上がります。 生徒たちは計3回のシミュレーションを行い、それぞれの結果画面(トータルスコアや購入内訳)のスクリーンショットを撮って、授業支援ツールの「第1位・第2位・第3位」の欄へ貼り付けていきました。
4. 分析・考察:「他の人のデータ」と比較して見えてくる課題
シミュレーション終了後、自分の結果と授業支援ツール上で共有されたクラスメイトの結果を見比べながら、分析・考察に入ります。
・個人考察: 「どんな点に気をつけて発電プランを組めばいいか」を分析。
・グループ共有: 班ごとに「自分はこういう組み合わせにした」「天候に左右されないためにはどうすればいいか」等を意見交換。
「失敗したデータからの方が、実は考察しやすいこともあるかも」という先生の声かけを受け、生徒たちは多角的な視点で分析を進めていました。
5. 全体共有とまとめ:リスクを管理する「エネルギーミックス」
グループワーク後、全体共有が行われました。
生徒からは「再生可能エネルギーと火力のバランスが重要」「天候に左右されない安定した供給が必要」といった考察が発表されました。
先生は生徒の発表を受け止めつつ、解説を加えます。 「シミュレーションでは水力発電が非常に強い結果になることもありますが、実際の日本にすべての電力を水力で賄えるほどの設備や土地があるでしょうか? ありませんよね。現実には地理的な制限やリスクがあります」
「単一の発電方法に頼るのではなく、様々な発電方法をバランスよく組み合わせることでリスクを管理する。この考え方を『エネルギーミックス』と言います」
生徒たちはノートの余白に「エネルギーミックス」というキーワードをメモし、単なるゲームにとどまらない現実の社会課題との結びつきを実感していました。
6. スクールAIを活用した深まりのある振り返り
授業の最後、生徒たちはQRコードから「スクールAI」にアクセスし、今日の学びについて振り返ります。
今回の振り返りでは、単に「今日わかったこと」を書くだけではありません。「今日の授業成果や課題」「実生活やこれまでの学びとのつながり」「友達の意見から得た気づき」など、冨田先生が大切にしたい振り返りの視点をあらかじめプロンプトに組み込んでいます。
生徒が入力した内容に対して、スクールAIはその記述をもとに、一人ひとりに合わせて問いかけたり、フィードバックを返したりします。
自分が書いたことについてさらに考えてみたり、授業での気づきを整理したり。AIとのやり取りを重ねながら、生徒たちはそれぞれのペースで振り返りを深めていきます。

そして、冨田先生が大切にしているのが、振り返りを書いて終わりにしないことです。
これまでは時間的に難しかった、一人ひとりの振り返りへのフィードバックも、スクールAIを活用することで毎時間行えるようになりました。
生徒が書いたことにAIが応じてくれる。そのやり取りを通して、授業で学んだことをもう一度考えたり、次の学びにつなげたりできることを、冨田先生は大切にしています。
生徒たちはAIとのやり取りを通して、それぞれの学びを自分の言葉で整理しながら、授業を締めくくりました。
インタビュー|先生と生徒が語る「スクールAI」活用のリアル
授業の実施前後、冨田先生と生徒さんたちに「スクールAI」活用のリアルな実感や変化についてお話を伺いました。
先生インタビュー
『毎時間の即時フィードバックと、授業の質を高めるための時間創出』
- なぜ振り返りにスクールAIを活用されているのでしょうか? 準備や設定の手間についても教えてください。
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振り返りのプロンプトの設定自体は、テンプレートのものを調整したアプリを使っているので、事前準備としては提出先を設定しておくだけで完了します。準備にかかる時間は5分〜10分程度ですね。
一度設定してしまえば、その後は繰り返し使えるので、毎回大きな準備が必要というわけではありません。生徒の提出内容も日付ごとに確認できるので、「よく書けているな」といったことも把握できます。
- 以前行っていた紙での振り返りと比べて、どんな変化がありましたか?
-
以前は紙の振り返りシートやノートの最後に振り返りを書いてもらっていました。ただ、4クラス(約140人)分を毎時間回収して全員分を読み、コメントを書いて返却するのは時間的に無理がありました。
1クラスあたり15分以上はかかるので、全体で1時間以上かかりますから、結局は単元が終わった後にまとめて回収するか、軽くスタンプを押す程度になってしまっていたこともありました。
振り返りの本来の目的は「その時間に学んだことを次の時間に活かす」ことなので、毎時間の即時フィードバックが重要だと感じつつも、時間的にできず申し訳なさを感じていました。
スクールAIを導入してからは、授業終わりのわずか5分ほどの時間でAIが即座にフィードバックを行ってくれるので、毎時間確実にフィードバックが返る仕組み自体が、子どもたちの学びのためになっていると実感しています。
チェック業務が大幅に削減された分、プラスアルファの時間で授業準備や、授業の質を高めるための時間として有効活用できるようになりました。
- 生徒へのフィードバックや問いかけにおいて、AIならではの良さや効果は感じますか?
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スクールAIではあらかじめプロンプト(指示文)で「振り返りで抑えてほしいポイント」を設定できるのですが、生徒一人ひとりの熟達度に合わせた個別最適な対応をしてくれる点が本当に素晴らしいと感じています。
ポイントを踏まえてしっかり書けている生徒には、その内容や学びを肯定しながら深めるフィードバックを返してくれます。
一方で、まだ考えを十分に言葉にできていない生徒には、AIが「こういう視点はどう思う?」といった追い問いを返してくれます。 それが、自分の言葉で表現・アウトプットしてみようというきっかけにもなっています。
- 実際に導入されて、授業中の生徒たちの反応や変化はいかがですか?
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生徒に「振り返りを入れよう」と指示を出すと、すぐに受け入れて黙々と入力し始めます。紙の時はうまく書けないままで終わってしまう子もいましたが、何か入力すれば必ずAIから自分に合わせた返答が返ってくるので、集中して自分の学びに向き合えています。
テストの点数への即時連動は今後の経過観察が必要ですが、自分の言葉でアウトプットする習慣がついてきているので、今後の成果を楽しみにしています。
生徒インタビュー
『AIとの対話で「自分の考え」と「理解」が深まる』

- 今日の授業の振り返りで、スクールAIとどんなやり取りをしましたか?
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今日のエネルギーミックスの授業について、まず「自分がどういう風に考えたか」を入力しました。そのうえで「友達との共有の仕方」についてAIに「こういう風にしたいです」と伝えたら、次回に活かせるアドバイスを返してくれました。
- 以前のように「紙」で振り返りを書いていた頃と比べて、使ってみて変化はありますか?
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小学生や中1の頃とか、紙に書いていた時はしっかり書くのが難しかったんですけど、スクールAIを使うようになってからは授業でやったことをちゃんと覚えていられるようになりました。
紙の時よりも、AIから具体的で分かりやすいアドバイスや評価をもらえるので、自分の課題が見つかりやすくて良いなと感じています。
- 授業での振り返り以外にも、スクールAIを活用している場面はありますか?
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AIに質問すればちゃんと答えてくれるし、「問題を出して」と言ったら練習問題を出してくれるので、自分で理解を深めるのに役立っています。理科だけでなく英語の英作文などでも手助けしてくれるので便利です。
- テスト勉強や普段の学習で、実際にどんな変化や効果を感じていますか?
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テスト前にこれまで書いた振り返りを読み直したりして使っています。
実際にテストでも記述問題がスラスラ書けるようになりました。実験の注意点や記述で「こういうところがポイント」という内容が、パッと頭に出てくるようになったのが一番の変化です。
まとめ
今回、スクールAIを活用することで、冨田先生は毎時間の振り返りに対して、生徒一人ひとりにフィードバックを返せるようになりました。
これまでも振り返りは行っていましたが、すべてに目を通し、一人ひとりにコメントを返すことは、時間の面で難しいこともありました。
「生徒が何かを書けば、必ずAIが返してくれる。そこがありがたい」
そう話す冨田先生。
生徒たちも、授業の最後になるとスクールAIを開き、それぞれの振り返りを入力しています。AIから返ってきた問いかけをきっかけに、もう一度自分の考えを振り返ったり、学んだことを整理したりすることもできます。
AIが答えを出すのではなく、生徒が書いたことを受け止め、その内容に応じて問いかけやフィードバックを返す。先生が大切にしている振り返りの視点をプロンプトに組み込むことで、一人ひとりの記述に応じたやり取りが生まれています。
「振り返りは、書いて終わりではなくて、その時間に学んだことを次の授業につなげていくためのもの」
毎時間の振り返りを、次の学びにつなげていきたい。そんな冨田先生の思いが、スクールAIを活用した実践にも表れていました。
■ 本取組に関する詳細や、スクールAIを活用した授業づくりに関するご相談は、下記までお気軽にお問い合わせください。
株式会社みんがく
E-mail:info@mingaku.net
TEL:03-4335-3965
本レポートで紹介した谷和原中学校の実践以外にも、スクールAIを活用した授業事例や、先生方の工夫を紹介しています。ぜひ、他の取組もあわせてご覧ください。
